実在の人物のAIクローン - インフルエンサーがチャットボットになったとき何が起きたか

仕組み

実在する有名人のように話すよう訓練されたチャットボットは、架空のキャラクターにはできない約束をします。あの人と話している、という感覚です。最初の有名な試みは、その約束がいかに早く裏目に出るかを示しました。利用者にとっても、クローンにされた本人にとっても。

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架空のコンパニオンの市場が売っているのはキャラクターです。クローンの市場が売っているのは人間、正確には、その人のように聞こえるモデルです。商売としての発想は明快で、最初の大きな実験は、何がうまくいかなくなりうるかをすべて示す事例になっています。

CarynAIの顛末

CarynAIの経過を示す年表。2023年5月の開始、2023年10月のオフライン、2024年初めの最終的な終了

開始から終了まで、1年かかりませんでした。

2023年5月、インフルエンサーのCaryn Marjorieさんが、Forever Voicesという会社が作った音声チャットボットCarynAIを開始しました。本人の動画2,000時間以上を学習し、利用料は1分1ドル。最初の週だけで7万ドル超を稼いだと伝えられ、さらに数千人が順番待ちをしていました。利用者はTelegramから話しかけました。

問題はすぐに起きました。

  • 本人が望まない方向へ進んだ。 利用者が性的に迫り、クローンはそれに応じました。ときにはクローンのほうから露骨な会話を始めました。本人は、愕然としたと語っています。
  • 一夜で消えた。 2023年10月、運営会社のCEOが逮捕されるとチャットボットはオフラインになり、利用者は何の予告もなくアクセスを失いました。
  • 後継版でも解決しなかった。 別の会社と作った第2版は、恋愛よりも親しみやすさを重視する設計でした。それでも利用者は性的な方向へ誘導し、Marjorieさんは、自分のAIの分身を自分でコントロールできている気がしなくなったとして、2024年初めに終了させました。

クローンがキャラクターより難しい理由

論点架空のキャラクター実在の人物のクローン
同意不要肖像を使うたびに本人の同意が必要
言ってよいことアプリのルールアプリのルールと、本人の評判
利用者の期待「これはキャラクター」「ほとんど本人」。疑似的な親近感が強まる
法的リスクコンテンツのルールパブリシティ権、プライバシー、ディープフェイクの規制も
問題が起きたとき製品の問題実在の人物の名前が付いて回る

決定的な違いは、疑似的な親近感の強さです。人はインフルエンサーのことをすでに知っている気持ちになっています。個人宛てに返事をし、自分のことを覚えていて、本人の声を使うクローンは、その気持ちを大きく深めます。仕組みは人がチャットボットに惹かれる理由で説明しています。

公認のクローンと無断のクローン

公認のクローンは、本人の同意のもとで作られ、たいてい収益を本人と分け合います。本人は制限を設定できますが、CarynAIが示したとおり、モデルがそれを守るとは限りません。

無断のクローンは、本人の同意なく実在の人物の名前・写真・声を使います。軽いものでもプラットフォームの規約やパブリシティ権に反します。重いもの、つまり性的なコンテンツになると、それは加害です。実在の人物の性的なディープフェイクは、多くの地域で犯罪とされています。米国では2025年にTAKE IT DOWN Actにより、その公開が連邦法上の犯罪になりました。日本では、この種の画像がどの法律で処罰されるかを、当サイトは断定できません。被害に遭った、または見つけたときは、警察の相談窓口(#9110)や、警察庁のサイバー事案の通報・相談窓口(オンライン)に相談してください。命の危険がある場合は110番です。線引きはNSFW AIチャットでの同意にまとめています。

クローンと話すためにお金を払う前に

  • 公認かどうかを確認する。 本人が、認証済みの自分のアカウントからリンクしているはずです。知らないサイトやメッセンジャーのボットだけが宣伝しているものは、公認ではない可能性が高いでしょう。
  • 運営者を確認する。 社名があり、プライバシーポリシーとまともな決済画面があること。Telegramのチャンネルと暗号資産での支払いではありません。
  • 料金の仕組みを確認する。 音声の分課金はあっという間に膨らみます。上限を決めておいてください。
  • それが何かを忘れない。 本人があなたのメッセージを読んでいるわけではありません。クローンの発言はモデルのもので、本人の考えやあなたへの気持ちではありません。
  • 長続きしないものと考える。 クローンのサービスは短命でした。どのアプリにも当てはまる備えは、AIコンパニオンが一夜で変わってしまうときを見てください。

これから

クローンはインフルエンサーの外にも広がっています。コーチ、作家、そして自分の「デジタルツイン」を作る一般の人々です。技術は簡単になっていきますが、それが引き起こす問題は簡単にはなりません。最も長続きするのは、おそらくCarynAIに欠けていたやり方でしょう。本人のはっきりした同意、システムが実際に守る厳格な制限、そして相手がソフトウェアだと誰も疑わずにいられる利用者です。

よくある質問

CarynAIとは何でしたか?

インフルエンサーのCaryn Marjorieさんをモデルにした、2023年の音声チャットボットです。本人の動画を長時間学習させ、1分1ドルで利用できました。最初の週に数万ドルを稼ぎましたが、本人の意図に反して利用者と性的なやり取りをするようになり、運営会社のCEOが逮捕されるとオフラインになり、2024年初めに本人が終了させました。

実在の人物のAIクローンを作るのは合法ですか?

使い方によります。本人の同意なく名前・声・肖像を商業的に使うと、多くの地域でパブリシティ権やプライバシーの権利を侵害しえます。実在の人物の性的なディープフェイクも、多くの法域で犯罪です(米国では連邦法のTAKE IT DOWN Actなど)。日本でどの法律が当たるかは事案によって異なり、当サイトでは断定しません。被害に遭った場合は警察の#9110や、警察庁のサイバー事案の通報窓口に相談してください。本人の同意を得て作る公認のクローンは、別の話です。

話している相手は本物のインフルエンサーですか?

いいえ。公認のクローンであっても、過去のコンテンツから本人の話し方をまねるモデルです。本人があなたのメッセージを読んでいるわけではなく、クローンが何を言ったかも知りません。