日本のAIコンパニオンと法律 - 何が決まっていて、何が決まっていないのか

プライバシーと安全性

米国ではニューヨーク州やカリフォルニア州などがAIコンパニオン専用の法律を作りました。日本には、2026年10月時点でそうした法律はありません。代わりに、AI推進法、個人情報保護法、特定商取引法といった既存のルールが、利用者の目に触れる部分を形づくっています。

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結論から言うと、日本にはAIコンパニオンだけを対象にした法律がありません。その代わり、AI全般の推進法、個人情報の法律、ネット通販の法律、未成年者向けの法律が重なっていて、アプリがすべきこと・してはいけないことの大半はそこから決まります。

専用の法律はなく、既存の法律が重なっている

AI推進法が2025年に成立しました。 正式名称は「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」で、AI法とも呼ばれます。2025年6月4日に公布され一部が施行、同年9月1日に全面施行されました。AI戦略本部の設置もこの法律に基づきます。

ただし、これは推進のための法律です。 事業者に直接の罰則はなく、EUのような禁止行為の一覧もありません。首相が本部長を務めるAI戦略本部は2025年9月12日に初会合を開き、人工知能基本計画の策定を担いました。基本計画は2025年12月23日に閣議決定され、第Ⅱ期の計画は2026年7月14日に決定されています。

個人情報保護委員会は、生成AIについて注意喚起をしています。 2023年6月2日に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」を公表しました。同じ日に、ChatGPTを運営するOpenAIに対しても、要配慮個人情報を本人の同意なく取得しないことや、利用目的を日本語で通知することなどを求める注意喚起を行っています。罰金や命令ではなく、注意喚起でした。

日本のAI関連ルールの主な動きを示す年表。2009年の青少年インターネット環境整備法の施行から2026年の第Ⅱ期人工知能基本計画まで

日本の主な法令・指針の動き。日付は各制度の公式発表にある施行日・公表日です。

日本で利用者に関わる四つの領域

法律の出どころはばらばらですが、利用者に関係するのは次の四つです。

  1. 個人情報。 個人情報保護法に基づき、事業者が保有する個人データについて、開示、訂正、利用停止・消去を求めることができます。事業者は遅滞なく対応する必要がありますが、法律に日数の定めはありません。限られた場合に断られることもありますが、その場合は理由が示されます。
  2. 契約と課金。 特定商取引法は、通信販売の最終確認画面に、価格、支払い時期と方法、申込みの期間、解約条件などを表示するよう求めています。2022年6月1日に施行された改正で、定期購入の条件の表示も明確になり、誤認させる表示は禁止されています。
  3. 未成年者。 青少年インターネット環境整備法は、青少年が有害な情報に触れにくいネット環境を整えることを目的にしています。2018年2月施行の改正で、携帯電話事業者は契約者が青少年かどうかを確認し、フィルタリングを説明して有効にする義務を負います。
  4. アダルトコンテンツ。 刑法175条は、わいせつな物や電子データの頒布・公然陳列を罰します。AIチャットそのものではなく、わいせつ物の配布が対象です。

なお、AIコンパニオンのアプリやアダルトサイトに年齢確認を一般的に義務づける日本の法律は、確認できていません。

法律ごとの違い:誰が何を担当するか

どの機関に何を相談できるかを知っておくと、困ったときに動きやすくなります。

分野法律・制度施行・公表要点
AI全般AI推進法2025年6月4日(一部)、9月1日(全面)推進が目的。事業者への直接の罰則はなし
個人情報個人情報保護法個人情報保護委員会が所管開示・訂正・利用停止の請求。相談ダイヤルあり
課金特定商取引法2022年6月1日(改正)最終確認画面の表示義務。誤認させる表示は禁止
未成年者青少年インターネット環境整備法2009年4月1日フィルタリングの普及。所管はこども家庭庁など
性的な画像性的姿態撮影等処罰法2023年7月13日盗撮や性的な画像の提供・保管などを処罰

この表は2026年10月時点の内容です。制度は改正されることがあるため、重要な判断の前には各機関の公式ページで確認してください。

内閣府の公式サイトにある、AI法の全面施行とAI戦略本部についての発表ページ

AI法の全面施行とAI戦略本部について、内閣府が出した発表。

利用者が実際に目にするもの

  • 自分がAIと話していると示すバナーや最初のメッセージ。 長いセッションで繰り返し表示するアプリもあります。利用者が勘違いしていると思われているのではなく、米国の州法を意識して全員に同じ設定を適用しているだけです。日本の法律が求めているものではありません。
  • 自傷をうかがわせる言葉で、キャラクターが役を降りること。 自動検知は、物語の暗い場面と本当の発言を確実には区別できません。誤作動は起こりえます。フィクションの場面なら、役を離れた一言を添えれば続けられることが多いです。
  • 年齢確認の強化。 Character.AIは2025年11月に18歳未満の自由な会話機能を終了し、行動の兆候、第三者による確認、最後の手段としての身分証確認を使っています。ほかのアプリも同じ方向に動いています。
  • 決済の画面。 日本の利用者向けに課金する以上、特定商取引法の最終確認画面の表示が関わります。定期購入に見えない広告でも、解約するまで続く契約のことがあります。国民生活センターは2026年4月28日、巧妙化する定期購入のトラブルについて注意を呼びかけました。

適用される規則は、運営会社の登記地ではなく、利用者がどこにいるかで決まるという考え方が一般的です。ただし、日本の法律がどこまで海外のアプリ運営会社に及ぶかは、個別の事案によります。

新しい法律がカバーしていないこと

会話ログの扱い。 日本にはAIコンパニオンの会話の保存期間や、モデルの学習に使うかどうかを定めた専用の規則はありません。個人情報保護法の一般ルールで扱われます。プライバシーの四つの確認は、今も一番使える手段です。

課金と返金。 定期購入のわなやクレジット制の価格、返金は、通常の消費者保護の法律が扱います。返金と解約を参照してください。

大人のコンテンツの選択。 同意した大人がAIコンパニオンでできることを制限する専用の法律は、確認できていません。

日本の外では

欧州は別の道を通りました。コンパニオン専用の法律ではなく、プライバシー法です。イタリアのデータ保護当局は、Replikaを運営するLuka Inc.に500万ユーロの罰金を科し、2025年5月に発表しました。処理の適法な根拠がないこと、プライバシーポリシーの透明性が足りないこと、成人向けをうたいながら機能する年齢確認がないことが理由でした。2023年2月の同じ当局の命令は、Replikaがある日突然、性的なロールプレイをやめた出来事の前触れでもありました。詳しくはAIコンパニオンが一夜で変わるときにまとめています。

実際の受け止め方と、いま困っているときの相談先

日本では、AIコンパニオンの利用を直接縛るルールは少なく、保護の多くは、個人情報、課金、未成年者といった既存の法律から来ています。大人が会話や遊びのために使う限り、画面上で目に見える変化は小さく、表示が一つ増える程度でしょう。見えない変化のほうが大きいかもしれません。個人情報保護委員会が生成AIに注意喚起を出し、AI戦略本部が動き出した今、運営会社は自社のキャラクターの振る舞いに説明責任を負う方向に進んでいます。慎重なアプリはより慎重になり、そうでないアプリは見分けやすくなります。

つらい気持ちが強いとき、詐欺や脅しに遭ったとき、契約でもめたときの窓口は、次のとおりです。

  • 命の危険があるとき: 110(警察)、119(救急)。
  • 死にたいほどつらいとき: よりそいホットライン 0120-279-338(無料・24時間)、#いのちSOS 0120-061-338(無料・24時間)。いのちの電話、こころの健康相談統一ダイヤルなど、厚生労働省の「まもろうよ こころ」に一覧があります。
  • 詐欺や脅しの相談: 警察相談専用電話 #9110。警察庁のサイバー事案のオンライン窓口でも通報や相談ができます。
  • 契約・課金の相談: 消費者ホットライン 188。
  • 個人情報の扱いの相談: 個人情報保護法相談ダイヤル 03-6457-9849(平日9:30〜17:30)。

よくある質問

日本でAI彼女アプリを使うのは合法ですか?

AIコンパニオンの利用そのものを禁じる法律は、確認できた範囲ではありません。ただし、わいせつ物の頒布を罰する刑法175条のように、既存の法律はアプリの種類を問わず適用されます。AIとのチャットそのものが対象になるわけではなく、わいせつな画像やデータを配布・公開する行為が対象です。

AIコンパニオンが何度もAIだと念押ししてくるのはなぜですか?

日本の法律が求めているからではありません。米国の一部の州法が、セッションの開始時や一定時間ごとにAIであることの表示を求めており、多くのアプリは国ごとに設定を分けず、同じ設定を全員に適用しています。そのため、日本からの利用でも表示が出ることがあります。

アプリがキャラクターを崩して相談窓口の電話番号を出してきました。なぜですか?

自傷や自殺をうかがわせる表現を検知して相談先を案内する仕組みは、米国の州法が各社に求めているもので、多くのアプリが世界共通で組み込んでいます。検知は自動で、安全側に倒してあるため、フィクションの場面でも作動することがあります。日本で実際につらいときの相談先は、本文の末尾にある「いま困っているときの相談先」にまとめました。